肝ミトコンドリアの脂肪酸の代謝が亢進すると,生じたアセチル-CoAの一部は別経路に入り,アセト酢酸,b-ヒドロキシ酪酸,アセトンのようなケトン体に作り変えられる。


CH3COCH3
アセト酢酸 D-b-ヒドロキシ酪酸
(3-ヒドロキシ酪酸)
アセトン
脂肪酸と違ってケトン体は水溶性であるため,ケトン体は特別な運搬タンパク質の助けがなくても血流によって肝臓以外の臓器(特に,心臓や筋肉)に運ばれる。細胞内でケトン体は再びアセチル-CoAに戻され,TCA回路で代謝されてエネルギー源となる(ただし,アセトンはエネルギー源にはならない)。
ケトン体の特徴
 1. 水溶性であり,血液中で脂肪酸のように特別な運搬タンパク質を必要としない。
 2. TCA回路や呼吸鎖の処理が追いつかないときに,肝臓で合成され,他の臓器に配られる。
 3. 骨格筋,心臓,腎臓などの重要なエネルギー源となる。
 4. 血中濃度が高くなると,脳のエネルギー源としても利用される。

脳は通常,グルコースだけをエネルギー源とし,脂肪酸を利用できない組織である(脂肪酸は脳血管関門を通れない)。そのため,飢餓時やインシュリン欠乏による糖尿病などでグルコースが利用できない場合,ケトン体が脳の唯一の代替エネルギー源になる。
なお,3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAは,コレステロール合成の出発原料としても利用される。