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(DNA polymerase) |
[DNAポリメラーゼの特徴のまとめ]
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性質 | I | II | III |
分子質量(kD) サブユニット 分子数/細胞 合成速度(NTP/分) 構造遺伝子 合成活性: 5'→3' 分解活性: 3'→5' 分解活性: 5'→3' |
109 1 400 600 polA + + + |
120 1 ? 30 polB + + - |
175 約10 10-20 30,000 polC + + - |
● DNAポリメラーゼ II も修復に関与(なくても細胞は死なない)。
[DNA ポリメラーゼIの立体構造]DNA鎖に結合している様子。結合に関与する塩基性アミノ酸残基を赤で示す。
[大腸菌DNAポリメラーゼIIIの構造] | [bサブユニットの構造] |
aeq: コア複合体(触媒中心) a: DNAポリメラーゼ e: 3'-5'エキソヌクレアーゼ b: クランプ g複合体: 進行性促進(クランプ装着) t: コアの二量体形成促進 |
大腸菌DNAポリメラーゼIIIのbサブユニットは2量体で,ドーナツ状をしている。12本のa-へリックスでできた中央の35Åの穴にDNAを通して複製中にDNAが外れないようにするため、クランプと呼ばれる。DNAポリメラーゼのコア酵素の複製速度を1000倍に高める。 |
性質 | a | b | g | d | e |
所在 分子質量(kD) サブユニット 合成活性: 5'→3' 分解活性: 3'→5' 分解活性: 5'→3' 合成に必要なもの RNAプライマー DNAプライマー プライマーゼの結合 アフィジコリン感受性 (DNA合成阻害剤) |
核 120-220 4 + - - + + + + |
核 30-50 1 + - - - + - - |
ミトコンドリア 150-300 2 + + - - + - - |
核 140-160 2or3 + + - + + - + |
核 ? 1? + + - ? + - + |
[ヒトDNAポリメラーゼbと切れ目のあるDNAの複合体]
青のらせんはa-helix,緑の矢印はb-構造である。中央に上から見た,切れ目のあるDNAの二重らせんが通っている。ポリメラーゼbはDNA鎖を挟み込むように結合する。
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(A) 2方向複製(q型) |
(2本鎖の一起点から両方向へ伸長) |
(B) 1方向複製 |
(一起点から一方向へ伸長) |
(C) ローリングサークル型 |
[DNAの半保存的複製] (A)一般の場合、(B)アデノウィルスの場合、(C)ファージfX174の場合 |
AATTTCGTCAAAAAATGCT………ATTTAAGTATTG………TGAAAAGCAAGCA…… ……CTAAACATAAAATCT……… |
[酵母の複製起点(ARS)] AとTに富む。赤で示す配列が必須で、下線部はその作用を増強する。 |
[ヒトのトポイソメラーゼI/DNA複合体] |
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[ジャイレースAの構造] | [ジャイレースBの構造] |
ジャイレースは通常A2B2の四量体を形成する。 |
[大腸菌の複製起点におけるラセンの巻き戻し] |
[ヘリカーゼの構造] |
分子の下側に斜めに深い溝がある。ここにDNAが結合する。 |
折れ曲がった1本鎖DNAに結合したSSB |
[Leading鎖の合成] 緑色はクランプ(bサブユニット) |
[DNAポリメラーゼVの触媒機構] |
左(赤)はクランプ,中央(濃緑)はポリメラーゼの触媒サブユニット,右(茶)は一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)である。中央には二本鎖と一本鎖のDNAが見える。 |
[大腸菌プライマーゼの構造] |
[lagging鎖の合成]
pol I 5'→3'エキソヌクレアーゼ活性でRNAを除去 pol I 5'→3'ポリメラーゼ活性でDNA鎖を延長 DNAリガーゼ 切れ目をつなぐ
大腸菌におけるDNA複製の全体の流れを示す。
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[DNAポリメラーゼの校正機構] Cの互変異性体(C*)はAを認識 Cの互変異性体(C*)がたまたまAと塩基対を形成し、DNAポリメラーゼで組み込まれる DNA複製が再開する C*が元のCに戻ると、
C・Aのミスマッチが
生じる>DNAポリメラーゼがもつ3'→5'エキソヌクレアーゼ活性がミスマッチヌクレオチドを切り出す 娘鎖の3'末端が対をつくっていないので、合成が停止する
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1次構造がほとんど似ていないにも関わらず,ヒトのクランプ(PCNA)は大腸菌DNAポリメラーゼIIIのbサブユニットとそっくりの構造をしている。中央にたくさんのa-へリックスで囲まれた径35Åの穴があり,DNAポリメラーゼdをDNAに固定する役割をもつ。図で色分けしたように,このタンパク質は3量体で構成されている。ポリメラーゼaと違って,ポリメラーゼdが長いDNA鎖を複製できるのはこのタンパク質のおかげである。 | |
[ヒトPCNA (proliferating cell nuclear antigen)]上および横から見た図 |
【ヒトの細胞のDNA】 23対、46本の染色体(2n) DNA鎖の長さ=99cm/haploid (n) 29億塩基対/haploid S期の長さ=約10時間 複製の速さ=約50塩基対/秒 (大腸菌:500塩基対/秒) DNAの複製起点=約100ヶ所/染色体 |
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阻害剤 作用 アラビノヌクレオシド
2',3'-ジデオキシヌクレオチド
三リン酸(ddNTP)
アフィディコリン細胞内で5'-三リン酸化され、DNAポリメラーゼ反応
を阻害。
大腸菌DNAポリメラーゼIを阻害(鎖終結法への
利用)。
dCTPやdTTPと拮抗してDNAポリメラーゼaを阻害。2'-デオキシ-2'-アジドシチジン
三リン酸
ノボビオシン、ナリジキシン酸
ベレニール、HOE13548プライマーゼを阻害。
大腸菌トポイソメラーゼIIを阻害。
トポイソメラーゼIを阻害。アドリアマイシン、ダウノマイシン
臭化エチジウム
DNAの塩基対間にはまり込む(インターカレーション)。
DNAやRNA合成を阻害。
ミトコンドリアDNAポリメラーゼgを阻害
(インターカレーション)。
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- テロメアの構造
- 線状染色体の末端をテロメア(telomere)という。テロメアは固有の塩基配列が何度も繰り返した構造をしている。たとえばヒトではTTAGGG,テトラヒメナではTTGGGGが1000回以上繰り返している。また,この鎖の末端は12〜16塩基ほど突出している。テロメアにはTRF1やTRF2といった,特有のタンパク質複合体が結合してT-loop構造をとり,突出した末端を安定化している。
J. D. Griffith et al., Cell (1999) 97, 503-514
- テロメアは細胞の寿命を決める時計
- テロメアがある長さまで短くなると、細胞はそれ以上細胞分裂ができなくなる。テロメアは細胞の寿命を決める時計の役目を果たしている。ヒトの寿命もこれと関連していることが示唆されている。
真核生物は直線状DNAをもつことで遺伝子の相同組換えを容易にし、遺伝子を改良する仕組みを得た。しかし同時に、限られた寿命を背負いこんだことになる。- 線状DNAの複製のたびにテロメアは短くなる(テロメア問題)
- leading鎖上のDNAポリメラーゼは合成を終了すると離れてしまうが、その時、lagging鎖の方の染色体末端のテロメア領域の一部はまだ複製に手がついていない。従って、複製のたびにlagging鎖の5'端は短くなっていく。また、leading鎖の5'端のRNAプライマーも後で分解されるので、こちらも短くなる。
[真核細胞の直線状DNA複製におけるテロメア問題] - テロメアの延長
- 短くなった娘鎖のテロメア部分はテロメラーゼで延長される。ただし、ヒトの場合、この機構は生殖細胞やある種の癌細胞に限定される。体細胞にはテロメラーゼが発現されていないため、複製のたびにlagging鎖の短縮が起こる。
[テロメラーゼによるテロメアの延長機構]
lagging鎖は延長された親鎖を鋳型としてさらに伸ばされる
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